〈梅一輪一りんほどのあたゝかさ〉。松尾芭蕉の門人・服部嵐雪の句が寒風のなかに暖を一輪咲かす季節になった。あすは二十四節気の最初に来る「立春」
1年の始まりも立春から、と旧暦では考えられていた。茶摘みの季節の八十八夜も台風がよく来る二百十日も、立春から数えてのこと。暮らしのなかで生き続けるあれこれを、教え継ぐパイプは時代とともに細っていく
立春に新春気分を味わい直す人もいる。2010年の滑り出しがここまでうまくいっていなくても、リセットは可能だ。そう思えば、一輪ほどのあたたかさ、の味わい方もまた違ったものになる
立春前日のきょうは季節を分ける節分。立春を1年の始まりとするなら節分はさしずめ大みそか。年を送って迎える雰囲気の行事などが昔からあった。鬼を追い払って福を呼ぶ豆まきもそのひとつ、と物の本にはある
調べついでに書き足せば、節分の恵方巻きの「恵方」は縁起の良い方角を言う。年ごとに異なる恵方を向いて太巻きを丸かぶりしながら願い事をする。そうする人が、政治と経済がさえないご時世だから今年もたぶん多い
恵方巻きはともかく、恵方は古来、その年の福徳をつかさどる神がいる方角を指した。大勢の人の願い事を聞く歳(とし)徳(とく)神(じん)をおもんばかったわけではなかろうが、江戸期の小林一茶の句−。〈足の向く村が我らの恵方かな〉。こういうリセットの仕方があってもいい。
春秋 西日本新聞 2010年2月3日
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