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救命「一条の光」島国日本では海を仕事場にする人の事故が絶えない・・・春秋 八葉蓮華

 鎮西町漁協(佐賀県唐津市)所属の漁船「第1幸福丸」の乗組員8人のうち3人が、きのう4日ぶりに救出された。伊豆諸島の八丈島近海で操業中に連絡が途絶えていた

島国日本では海を仕事場にする人の事故が絶えない。多くのシ者が出た今春の長崎県平戸市沖での漁船沈没は記憶に新しい。悲しいニュースの中に今回のように救助の報も時々交じり、一条の光をともす

青森県沖では今年5月、火災で船を失った乗組員が救命いかだで5日間漂流したあと救出されている。救命いかだがあればこそ、と思わせる救出例が多い。九州では一昨年、鹿児島県沖で3人が3日後に、というのもあった

きのうの救出劇は、転覆した船体を海上自衛隊の哨戒機が発見したところから始まった。巡視船が急行し、潜水士が船底をたたくと、たたき返す音がした。救助された3人は船底に近い部分にできた空間(空気だまり)にいた

30年ぐらい前にも同じことがあった、と同僚が言う。調べると、1981年の長崎県五島沖だった。瀬渡し船が転覆している。救出されたうちの2人は船底にできた50センチの空間で呼吸を続け、3昼夜を生き抜いた

第1幸福丸の場合はどうだったのか。台風20号にも遭ったと思われる。船長はシ亡が確認され、4人がなお行方不明のままだ。3人はどうやって4日間も耐えたのだろう。この朝刊のどこかに出ているはずの3人の話に一条の光を見る。

春秋 西日本新聞 2009年10月29日
創価学会 地球市民 planetary citizen 仏壇 八葉蓮華 hachiyorenge

ゆかりの地「五足の靴」靴跡をたどり直すといろいろ見えてきそう・・・春秋 八葉蓮華

 〈五足の靴が五個の人間を運んで東京を出た〉と始まる紀行文がある。タイトルは「五足の靴」。1907(明治40)年8月から9月にかけて東京二六新聞に連載された

「五個の人間」とは、与謝野寛(鉄幹)、平野萬里、北原白秋、吉井勇、木下杢太郎の5人を指す。雑誌「明星」の主宰者と、そこに集う歌人・詩人たち。主宰者鉄幹は30代半ば、ほかは20代前半だった

関門海峡を連絡船で渡り、博多で泊まって柳川を基点に九州をめぐった。連載原稿は交代で匿名執筆し、旅先から送ったという。佐賀、唐津、佐世保、平戸、長崎を経て天草、島原、熊本、阿蘇などと続く1カ月の旅だった

訪れた先々には文学碑もある。一昨年は「あれから100年」の企画が各地で催された。五つの靴跡を小旅行でたどりながら「往時の歌人・詩人と九州」に思いをはせる人たちの姿も見られた

鉄幹らの九州旅行はキリシタン遺跡探訪の色も帯びた。出発前に木下杢太郎が上野の図書館に通って調べた。いわく「ゲーテの『イタリア旅行』に心酔していましたから、そういう見方で九州を見てやろうという下心でした」(岩波文庫の解説から)

靴跡をたどり直すといろいろ見えてきそう。ゆかりの地が連携したリレー講座などが来月4―9日にアクロス福岡で開かれる。

春秋 西日本新聞 2009年10月28日
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日本を一度に大きく変える「戦後行政の大掃除」多くの困難が待つ・・・春秋 八葉蓮華

 「ある時は片目の運転手、またある時は老巡査…」。七つの顔を持つ探偵に片岡千恵蔵さんが扮(ふん)した映画「多羅尾伴内(たらおばんない)」にはそんなせりふがあった。終戦間もなくのことだ

1970年代にピンク・レディーが歌った「ウォンテッド」には、次々に変装して逃げ回る恋泥棒が登場する。「ある時謎の運転手、ある時アラブの大富豪…」

21世紀の今は一国の指導者もネタを提供してくれる。過去の顔も含まれるが、つなげてみると結構多彩。理系研究者から政治家に転身した。カラオケでは「おふくろさん」を歌う。居酒屋も経営した。あだ名は「宇宙人」

首相になって40日が過ぎた。東京への五輪招致演説を行って帰国した日に、チャリティーファッションショーにも登場している。ワインレッドのジャケットに白いシャツ、黒いズボン姿で腰に手を当ててモデルのように舞台を歩いた

「ある時は居酒屋経営者、ある時はファッションモデル…」。手品師も想像で加えたくなる。日本を一度に大きく変えるには手品でも借りたい気分だ。手品師の小道具になるシルクハットも似合いそうだし…

臨時国会冒頭の所信表明演説で鳩山首相は「戦後行政の大掃除」を宣言した。多くの困難が待つ。脱いだシルクハットから手品師がハトを取り出すようなわけにはいかない。長い目で見守る気持ちを国民に持ってもらう努力なしには成功しない。首相の人間的魅力も試される。

春秋 西日本新聞 2009年10月27日
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社会の激変、ストレス「飲酒」アルコール事情は国の姿も映す・・・春秋 八葉蓮華

 クリントン元米大統領が在任中にひそかに受けたインタビューをまとめた近刊本のなかに、1995年にロシアのエリツィン大統領(当時)が訪米した時の秘話も出てくるそうだ

深夜、ホワイトハウス近くの路上で下着姿で立っているのをシークレットサービスが見つけて保護した。ロシアの大統領はひどく酔っていた。ピザを買うためタクシーを拾うつもりだったと、ろれつが回らない状態で説明したという

大国復活をエリツィン氏も目指したロシアは、アルコール消費でいえばとうに大国だ。極寒の地が多いので強度の酒が好まれてきた。それにしても、と現大統領のメドベージェフ氏は言う。「飲酒の害は国家的惨事」

アルコールの中毒症状によるシ者は年間に約3万人を数える。病気を除く主なシ因の一つになった。ロシア人男性の平均寿命は61歳と低い。人口は毎年減り続け、このままだと40年後には3分の2に減ってしまう

最新統計が示す国民1人当たりの消費量は、世界保健機関(WHO)が「これを超えると健康に有害」とする目安の2倍以上もある。政府はボトルの大きさを制限したりする規制案を打ち出している

20年ほど前の消費量は現在の3割程度だったらしい。ソ連崩壊を機に増えた。ストレスが強まったせいだ。社会の激変がそうさせた。激変させた一人であるエリツィン氏自身が飲酒大国を象徴した。アルコール事情は国の姿も映す。

春秋 西日本新聞 2009年10月26日
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「いのちの電話」いのちをつなぎ留める糸電話の糸を細らせてはいけない・・・春秋 八葉蓮華

 呼び出し音が鳴ると、「糸電話のように」と自分に言い聞かせながら受話器を取るそうだ。「福岡いのちの電話」の相談員の一人は今月発行の広報季刊紙にそう書いている

 相談員の研修を終えて間もない人だ。「糸電話は両方が同時に話すことはできないし、糸が弛(ゆる)んでいては声を聞くこともできない。だから私は耳をそばだて、少しでもよく聞こえるように、糸を張ることに集中する」

 家族や友人にも話せず一人で悩み、不安におののき苦しむ人たちからかかってくる。10代から70代まで各層にわたり、30代、40代の順に多い。絶望して自サツをほのめかす電話も交じる

 相談員は全国にいる。51カ所の「いのちの電話」事務局で受話器を取り、一緒に考える。「福岡いのちの電話」では約200人が24時間対応で昨年は2万件強の相談を受けた。全国の受信件数は70万件を超える。救われたいのちが少なくない

 「福岡」は開局25年を迎えた。ずっと相談員をしてきた一人は「いのちの電話への感謝の電話が、自分の対応したものだったと分かった時の感激」を季刊紙に寄せている。その人は社会の役に立ちたいと思って相談員になった

 相談員は全国どこも皆ボランティアだ。数が減って困っている地域もある。賛助会費や寄付金などで支えられた運営資金も景気低迷で思うにまかせないところが多いと聞く。いのちをつなぎ留める糸電話の糸を細らせてはいけない。

 春秋 西日本新聞 2009年10月25日
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